技術情報

せん断流安定化Zピンチ核融合は、マグネットや極低温冷却装置、高出力レーザーが必要としない技術です。

Zピンチの誕生

1905年、オーストラリアの科学者2名が奇妙な現象に直面しました。灯油精製所の避雷針が、ものすごい力で握りつぶされたかのように変形していたのです。その原因は落雷でした。雷が放出する電流によって非常に強力な磁場が発生し、中空構造の金属棒をまるで段ボールのように押しつぶしたのです。これは「ピンチ効果」あるいは「Zピンチ」と呼ばれる電磁気現象を如実に表した例で、この現象のおかげで初期の核融合実験が可能になり、実用化可能な核融合発電機の開発において最も有望な方法と見なされています

  • 電流によって磁場が発生

  • Zピンチ効果とは、電流が生み出す非常に強力な磁場によって物質が圧縮される電磁現象

  • 一定以上の強力な電流をプラズマに流すとZピンチ現象が発生し、核融合反応に必要な高温・高密度環境が生まれる

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Zピンチを利用した核融合の仕組み

核融合エネルギーの可能性を引き出す鍵は、原子の中心で原子核同士が反発し合う力に対抗することです。極めて高温・高圧の環境下では、原子核同士が互いに近づき結合(核融合)することから、この名前がつけられています。

核融合は原子核を分裂させる核分裂とは真逆の反応で、長期にわたって放射性廃棄物を残すこともありません。太陽などの超巨大な高温プラズマの塊である恒星では、その巨大な重力が高温・高圧環境を生み出し、核融合反応が起こり、強力なエネルギーを宇宙に放射し続けていますが、核融合技術はこれと同じ仕組みです。Zap Energyは、私たちが住むこの地球で、Zピンチを利用することで核融合が起こる条件を実現しようとしています。

  • 核融合エネルギーは、原子の中心で原子核同士が反発し合う力を打ち破り、2種類の軽い原子核が融合して1つの重い原子核になる時に発生

  • Zap Energyの技術では、重水素とトリチウムを数千万度まで加熱することで高いエネルギーを持つヘリウムと中性子を生成。これらを取り出し、熱や電気の生成に使用する

  • 質量あたりのエネルギー量は石炭の約1,000万倍に相当

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Zap Energyの革新技術「せん断流安定化」

Zピンチを利用した核融合には、従来の核融合アプローチに不可欠とされていた高額かつ煩雑な磁場装置を使わずに、クリーンで長時間持続するエネルギーを実現できる可能性があります。しかし、超高温のプラズマ内部では強い反発力が働くため一瞬の間しか閉じ込めることができず、意味のある量の核融合エネルギーを生み出すのに十分な期間、プラズマを維持できるかどうかが課題となっていました。

Zピンチを利用した核融合の研究自体は1950年代から行われていたものの、研究者たちは長い間、プラズマが一瞬で消滅してしまうことに頭を悩ませていました。Zap Energyは、「せん断流安定化」と呼ばれるプラズマ物理学における画期的な技術でこの問題を解決します。これにより、理論上はZピンチ状態のプラズマの寿命をほぼ無限に延ばすことができる可能性があります。

  • プラズマは一瞬で消滅してしまうため、継続的に核融合反応を起こすことは難しい

  • Zap Energyは、プラズマを川の流れのような「動的な流れ」として捉えることで画期的な進展を遂げる

  • Zap Energyの共同創設者、ウリ・シュムラックが先駆けとなったプラズマ物理学の革新技術「せん断流安定化」により、理論上はZピンチ状態のプラズマの寿命をほぼ無限に延ばすことが可能に

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Zapの核融合炉の仕組み

Zapの装置は加速器と反応路を組み合わせたような設計で、Zap Energyの発電プラントの中核として機能するよう科学的に設計されています。ワシントン大学(UW)のシュムラック研究室で20年以上にわたって行われた小規模装置を用いた研究により、せん断流安定化Zピンチ核融合が機能することが実証されています。

  • Zap Energyは、せん断流安定化Zピンチ核融合を検証するための一連の装置を開発

  • Zピンチ内の電流が高いほどプラズマが高温・高密度になる

  • Zap Energyの最新の核融合炉であるFuZE-Q装置は、Q=1(科学的エネルギー損益分岐点)の達成を目指して設計

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核融合プラントの開発

商用の核融合プラントの建設に関して、Zap Energyの基礎技術には大きな利点があります。まず、他の方式に見られるような巨大な設備や超伝導マグネット、高出力レーザーが必要ありません。これは、Zap Energyのプラントは従来型のものよりコンパクトで高効率に稼働できる可能性を意味します。コンパクトで高効率という特性は、エネルギーを安価に供給し、他のエネルギー源とも十分競争可能とするために必要な、費用対効果が高く柔軟に拡張可能なシステムの実現に向けて最重要とされている特性です。

可能な限り早く核融合を送電網に乗せるため、Zap Energyのエンジニアたちはすでに、Zピンチ核融合を一般社会で使用可能なエネルギーに変える補助システムの開発・検証を進めています。

  • Zピンチ核融合プラントは、巨大施設や超伝導マグネット、高出力レーザーが不要となるなど、従来の核融合アプローチと比べて多くの利点がある

  • Zap Energyのエンジニアは現在、高度な電力供給装置や液体金属壁など、プラントの主要な補助システムを開発・検証中

  • 小型で排出物質を発生させず、需要に合わせたオンデマンド稼働が可能なZピンチ核融合プラントは、ほぼすべての場所に設置可能

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研究開発

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